ヘヴィサイド-数学界の権威に立ち向かった電気技師

11月 9, 2017

はじめに オリヴァー・ヘヴィサイドについて

オリヴァー・ヘヴィサイドという人物をご存知でしょうか.

ヘヴィサイドは電気技師でしたが,数学に関する多大な功績を残した人物です。

一般の方はピンとこないかもしれませんが、理系の大学生は一度はお世話になると思います。

また、意外と知られていませんが、同軸ケーブルと呼ばれる、音響関係でよく使われるケーブルを発明したのもオリヴァー・ヘヴィサイドです。

ヘヴィサイドは19世紀半ば、1850年にロンドンで生まれ、1925年に74歳で亡くなります。

電気に関する功績は数え切れないほどあり、しかもどれも非常に重要なものですが、
数学・物理に関する具体的な発明は、

・ヘヴィサイドの演算子法
・ヘヴィサイドの展開定理
・ヘヴィサイドの階段関数
・マクスウェル方程式(を現在のように簡潔に表現した)

などあげられます。

あまり聞き慣れないものばかりでチンプンカンプンかもしれませんが…

これらはすべて応用数学の基礎としての役割を果たしていることも非常に重要ですが、さらに彼の凄いところは、彼自身は数学者ではないということです。つまり、研究機関に所属しない、一介の技術者だったことです。

しかも大学などで高等教育を受けていないという点も、後の彼の個性的な業績に影響していると言えるでしょう。

ヘヴィサイドは、理系学生なら必ず耳にする名前

彼の名を知る理系学生は多いでしょう。特に、電気工学を専攻しいたり、電気回路の基礎を勉強していると、よく耳にする名前です。

しかし、彼の名前に因んだもの(上記で挙げた展開定理や階段関数など)ばかりが登場し、彼の業績について触れている教科書や書籍はあまりなく、話題にする人も僅かです。

一般にあまり知られていない、ヘヴィサイドにまつわるエピソードを紹介させていただきます。

全てが特殊だったヘヴィサイドのキャリア

彼はゆりかごから墓場までキャリアが極めて特殊でした。

ヘヴィサイドは幼児期に猩紅熱という伝染病にかかり難聴になりました。彼の性格はかなりひん曲がったもので頑固だったと言われていますが、難聴が影響している可能性があります。

16歳になったヘヴィサイドは学校に行くことを止め、独学で主に電磁気学と数学を勉強を続けました。そして20歳になり、電信会社に就職しますが、24歳になり退職し、以後独りで研究に没頭します。

30歳頃に、彼の功績の1つの、演算子法を発明します。(当時、演算子法に関する先行研究はありましたが、実用的なものにしました)

ところが、彼は一介の技術畑出身であったため、その理論は数学的には厳密性に欠けたものであったと言われています。

そのため、この発明はなかなか評価されず、結局、後に数学者ブロムウィッチが厳密に説明しました。

ヘヴィサイドは当時演算子法について、数学者たちと大激論になった際、一歩もたじろぐことはありませんでした。それどころか、このような言葉で彼らに立ち向かいました。

“Why should I refuse a good dinner simply because I don’t understand the digestive processes involved?”
(消化のプロセスを知らない私は、素敵なごちそうを断らなければならないのか?)

技術者であれば共感できる方がほとんどではないでしょうか。

彼は、理論の厳密さにこだわりすぎるあまりに、科学技術の発展の妨げになることはナンセンスであると主張したかったのです。

その後ヘヴィサイドは、当時、大規模に張り巡らされる電話線網が抱える重大な問題(信号の歪みに関する問題)を解決します。

しかし、彼の発想は当時予想されていたものとは全く異なるものであったため、やはりこの時もすぐには認められませんでした。しかも、後に正しいことが発覚すると、ある電話会社がそれを横取りするような形で特許を申請してしまったのです。

これに激怒したヘヴィサイドは、その電話会社から特許権の代わりに対価を支払うとの申し出も断ってしまいました。

さらに、当時、科学界の最高権威といわれていたロンドンの王立アカデミーからの出資も拒んでおり、貧乏な生活を送っていたそうです。

晩年はゲッチンゲン大学から名誉博士号の授与も受けるなど、栄誉も与えられましたが、その一方で彼の私生活は謎が多く、存命中に正当な評価が与えられることなくこの世をさります。

オリヴァー・ヘヴィサイドの悲劇的な晩年

ヘヴィサイドの功績のほとんどは死後に認められたものばかりです。彼の数学的な発明はいずれも大変便利で実用性の高いものでしたが、厳密性に欠け、数学者たちからは激しい攻撃にあったのです。

しかし後日、そのほとんどが正しいものであると認められたのでした。

彼はあくまで技術者であり、実用面を重視したため、すべてを突き詰めて考察したい数学者たちとは、悲劇的なくらい相容れない人物でした。

ヘヴィサイドが影響を与えた人物について

直接的に影響を与えた人物というのはいませんが、これほど広範囲に、しかも、その分野の基礎の基礎の構築に貢献し、以後の科学技術に大きな影響を与えたました。したがって、現代の科学技術者全てに影響を与えたと言えるでしょう。

まとめ

彼が残した功績は一見目立たないものです。

我々が最も称えるべきは、彼の隠れた偉大な功績と共に、彼の自然科学を愛する純粋な志や、数学のプロに負けず劣らず議論を繰り広げ自分の信念を貫き通した彼の頑固で勤勉な姿勢でしょう。

どんな仕事であっても,立場の上下にかかわらず、正しいことは正しいと真っ向から議論して、信念・プライドを持って取り組みたいものです。