大人の記憶法 大人になって低下したのは記憶力ではなく○○力だった。解決策は?

5月 16, 2018

はじめに 大人になったら記憶力が低下したと感じる人は多い

大人になって、若いころと比べ記憶力が低下したと考える人は少なくありません。しかしこれはある記憶法で乗り切ることが十分可能です。記憶力が低下したと考える人のほとんどは「なんか最近一年が過ぎるのがとても早い」とも口にします。実はこのふたつには共通する原因があります。

後者から考えてみましょう。

「なんか最近一年が過ぎるのがとても早い」原因を、簡単な実例から。あなたは道を歩いていて、往路と復路ではどちらが早く感じるでしょう。まず往路には記憶したくなる新鮮な情報がたくさんありますよね。また迷いたくないという危機感もあり、いろいろなものに目を配るでしょう。花段の花、お寺の門、古い看板、いろいろ目にして、脳にとどめます。そして復路は、一度体験しているため記憶しないといけない情報は多くありません。これが時間経過は同じでも復路が早く感じる理由と考えられます(他説もあり)。

大人が、一年がとてもはやく過ぎると感じるのも理由は同じと考えられます。正月が過ぎるとひな祭りがあって、桜が咲いて、鯉のぼりの季節になる。残念ながら大人はそれを既にぜんぶ知ってしまっています。知っていることなので、新たに記憶に焼き付ける必要はないですよね。このような感覚は、かつて勉強をしっかりやった人には、問題集を何周も回している感覚といえば、伝わりやすいかもしれませんね。

このように「一年が過ぎるのがとても早い」のではなく、新たに覚えなければないない情報がとても少ないので「早く感じる」のです。

ここでタイトルの、○○力の正体を。正解は「感動力」です。大人はいろいろ経験してきたので、子どものように感動できる能力がどうしても欠如してしまいます。そのために、大人は「記憶力が落ちた」と勘違いしてしまうのです。大人の記憶法。次はこの「感動力」の引き出し方を考えてみます。

大人の記憶法 昔のように記憶できないという人はブレーキを壊せ

脳の中で記憶に深く関係する器官として有名な「海馬」。その仕組みはまだまだ解明されていないことが多いです。しかし今からやる行為が過去に成功したかどうかはしっかり記憶しています。失敗したかどうかについてもしっかり記憶しています。

失敗面でいうと「ああ、こいつは前に記憶しようとしたけどできなかった内容だな。でも大丈夫か。記憶できなくてもとにかく死にはしなかったんだ」。そして「この程度のことは記憶しなくても大丈夫なんだ」。その結果「それなら最初から記憶しないほうが脳に大きな負担をかけないぶんいいか」というように処理します。

大人の場合は、このような「失敗体験」が層をつくるかのように複雑怪奇に折り重なってしまっています。「記憶しよう」と思った瞬間に「記憶しなくていいよ」とブレーキがかかるようになっているわけです。脳という、栄養の最大消費器官は、いつも、生存のため休息を欲しているのです。脳はとてもなまけもので、いつでもブレーキをかけようとする傾向が強いのです。まずは、そのブレーキを、上手に壊してやる必要があります。

大人の記憶法 記憶ブレーキをブチ壊すことからはじめましょう。

大人の海馬は前述のようなありさまです。いろいろとひねくれています。すぐにブレーキをかけたがります。また前述したように、感動する能力も衰えています。「うっすら知ってるよそれ」「それ命の維持に関係ないよ」「疲れるからその情報捨てるよ」と処理してしまいます。

しかし最大の救いは「記憶する能力そのものは大人になっても変わっていない」ということです。脳細胞は140億個くらいあります。成人では毎日10万個死滅すると言われますが、年間では3600万個、10年で3億6000万個、50年でも18億個が失われるだけで、120億個も残ります。また神経細胞の束であるニューロンは年とともにますます成長しているとも言われます。

ひねくれた記憶ブレーキの解除法とは

具体的にやっていきましょう。まずはイメージです。成功したらどのような自分になるか。その資格試験に合格したら、何ができるか、具体的にイメージしましょう。これによりイメージの脳である「前頭連合野」を十分刺激します。勉強の前に行いますが、この「アクセルの踏み込み」は毎回行う必要はありません。毎回だと飽きてしまい効果が薄くなります。

たとえばスペインに旅行するために、旅行雑誌をパラパラ開くような感覚です。一日目にサグラダファミリアをみたい、その夜にバルセロナの本拠地でサッカーを観戦して、夜中はこのバルで美味しい物を食べたい。このように具体的にモチベーションを上げます。

アクセルを踏んだら、次にいよいよブレーキを破壊していきましょう。

記憶の「ブレーキ」として主に機能しているのは、短期記憶を長期記憶に書き替える部位とされる「海馬」と、そのご近所さんで、快不快、好き嫌い、安心・不安などの情動を司る「扁桃体」です。特に「扁桃体」には、記憶の調節(memory modulation)の役割があるとされます。「海馬で作られた短期記憶は扁桃体と協同して整理され」ます。いらないものは捨てられる。いるものは長期記憶として固定され、生涯にわたり保持されます。たとえば、これができなければ大変なことになるといった「危機感」や、逆にこれができたら素晴らしい未来につながるといった「期待感」がともなうとき、記憶の固定化がさらに深まります。

わたしたちは先に、イメージの脳である「前頭連合野」で理想の将来像を鮮明にしていますよね。そのおかげで、その理想の将来像に結びついた「短期記憶」は、大切に扱うべき長期記憶として固定化しやすくなっています。これが記憶できれば素晴らしい未来が待っているんだと。それでもなお「そんな簡単に行くわけない」「実はいらないんじゃないか」というひねくれ回路も、海馬と扁桃体には濃く残ります。大人の記憶ブレーキはなかなか強力です。「わたしは何でもできる」という馬鹿げた全能感は、大人(の脳)には現実感をともなわないものとなります。ひねくれまくりです。そこで次のステップです。

ワンポイントを突き破る そして突き破った自分を褒める

記憶のブレーキを壊すいちばん簡単な方法は「自分を褒めること」です。小さな達成感を得て、それを自己確認することです。大きなことをやろうとすると、「そんな簡単に行くわけない」というひねくれた回路が強く邪魔をします。だから、その邪魔が入る余地のないくらい小さい簡単なワンポイントをまず突破するのです。しかし、とりかかるには、その課題・試験の中核をなすテキストがいいでしょう。

たとえば行政書士をめざすならまず「民法」からです(異論あります)。「民法」で多用される「利益均衡」「原則・修正」という思考パターンを叩き込むと、先々の勉強が楽になります。また司法試験、予備試験、司法書士、行政書士、宅建など、多数の資格試験の課題となるため、お得感もあります。ただし民法を完成するにも長大な勉強時間が必要になるので、できるだけ薄い基本書を短期間で回す。自分が決めた回数だけ回す。それができたら、思い切り自分を褒めます。

褒め方はそれこそ自由です。理解できたという現実さえあれば、そこにウソも思い込みも混在しません。しっかり褒めましょう。大人にはまず、この小さな小さな穴が必要です。ダムがアリの一穴から崩壊するというイメージです。あとはどんどんブレーキレスにしていきます。「やればできる」→「やったらできた」→だから「次もできる」。リミッターはこのように連鎖的に、一気にはずしていきましょう。

さて中心部に穴があいたら、あとはその周りを掘り進むだけです。合格というのは、「自分が通り抜けられる穴を空ける」行為です。必要なのは合格点です。必要以上のことはしない、できないと決めましょう。重要で基本的な考えを理解・記憶した上で過去問ができるようになればいいのです。六法全書を暗記する能力もヒマも、わたしたちにはありません。

大人の記憶法 まとめ

この方法は他の様々な試験でももちろん有効です。中核を決める。そして、できるだけ理解しやすい、薄いテキストを必要な回数だけ読み込む。できた自分を褒める。その穴から出発して、次の課題を用意する、演習しつつ記憶する。手順は同じです。

大人になり、ひねくれて、できない言い訳を重ねてきた「海馬」と「扁桃体」。それらに対して、休む間もなくどんどん「できた」という「感動」を注入しつづけることです。リミッターをはずしましょう。

やがて子どものような全能感を感じるようになったらしめたものです。子どものように、できた感動、知った感動で、脳を満たし続けて下さい。