勉強がゾーンに入ると驚異の集中力を発揮できる。ゾーンへの入り方の全手順
はじめに
昔の野球選手が調子のいい時「ボールが止まって見えた」という名言を残しました。今でいえばそれは「ゾーンに入っていた」ということになるのでしょう。アスリートではないですが、わたしたちも勉強や仕事をしていて、とても集中している時は「いつの間にか時間が経っていた」という経験をすることがあります。そのときの集中も「ゾーン」の一種といえるでしょう。
「ゾーンに入る」と、一般的には「すばぬけた集中力を獲得できる」「最高のパフォーマンスを発揮できる」「自然に体が動く」「ワクワク感を感じる」「リラックスしつつ集中できている」「思った通りに物事が進む」「信じられないようなスピードで仕事ができる」「疲労を感じない」というメリットがあると言われます。勉強に利用できれば最強ですよね。
それでは「ゾーン」とは何でしょうか?
「ゾーン」とは何か。まだ心理学的に明確な定義は行われていません。アスリートは「肉体と意思が完全に調和していた」「体が勝手に動いた」「試合をしている自分を上から眺めていた」「時間がものすごくゆっくり流れていた」などと表現します。繰り返し繰り返し練習した上で、極度に集中した結果訪れる、不思議としか言いようのない時間の歪み体験を称して「ゾーンに入る」と言っているようです。
思考は、おおざっぱに言えば電気信号の組み合わせです。だから、我々は、最大では電気が伝わる早さ、つまり「光の早さ」と同じくらいの早さで考えることができます。その超集中状態を「ゾーン」と考えていいのかもしれません。だからこそ、「時間が日常と違った流れ方をする」と考えれば少しつじつまが合いますね。
でも、正解はわかりません。わからないけど、このような超集中状態「ゾーン体験」を自在に持つことができると、勉強は確実に、はかどり深まると思いませんか。時間を実際の何倍にも使えるのですから。それでは、どうすれば「ゾーンに入る」ことができるのでしょうか。
「ゾーン」は昔から存在していた そこから逆に考えてみましょう
「ゾーン」といえばとても新しく聞こえます。しかしこれは、日本人には昔から馴染みのある概念です。たとえば仏教では「観自在」という言葉で、すべてを思いのままに見ることができる状態をとても重視しています。また、座禅や瞑想、茶道等も同様です。無我の境地、つまり「悟り」の境地=「ゾーン」を目指して修行が行われています。
そこには、どのような特徴があるのでしょうか。
たとえば仏教の修行者は、南無阿弥陀仏や南無妙法蓮華経といった名号を繰り返し唱えます。また、毎朝早朝決まった時間に起き、厳しく決められた掟に従って静かに修行を開始します。すべて決まっていることなので何も考える必要はありません。また、茶道ではお点前という所作・作法・様式が決められています。これはスポーツ選手における、重要局面でのルーティンと同じですね。
昔から用いられているのは、「できるだけ無駄を省くこと」「決まったことを毎回ちゃんと繰り返すこと」という手法です。つまり「限定的」な目的だけに絞り、極度の集中で繰り返しある行為を行った時に「ゾーンに入る」という状態が訪れるという仕組みです。
テニスに置き換えると、最初は得点のことが頭にありますよね。観客の声援も、相手選手の表情や体調も目に入ります。まずそれを捨てていきます。そのために、返ってくるボールだけを見ます。ボールを打ち返すという行為に集中します。それを繰り返しているとき、観客も対戦相手のことも捨て去り、やがて「ゾーン」が訪れます。
捨てること、そして集中することです。
まずは要らないものを捨ててみましょう!
わたしたちの「現在」に、過去へのこだわり、失敗した経験は必用でしょうか。過去に対する負の感情は「いま」にとっては不用です。「いま失敗しないためにはどうするか」という「現在」の意識だけが必用です。「いま」に絞り込んで下さい。
それでは未来の夢は必用ですか。もちろんモチベーションアップのために必用かもしれませんが「いま」にとっては役に立ちません。未来のために「いま何をするか」という「手順」だけに絞るべきです。
机に散らかった様々なものは必用ですか。スマフォは必用ですか。ゲームは必用ですか。意識がいろいろなモノに拡散していては「ゾーン」には入れません。できる限り、削ぎ落としてしまいましょう。
でも反対に、笑い声であふれるファミレスで集中して勉強できたということもあります。よくそんな状態で勉強できるなと思いませんか。プロスポーツの試合が、観客の大声援の中で集中力高く繰り広げられるのに似ています。
つまりファミレスの談笑、客席の声援は、ひとを孤独にしてくれます。逆に削ぎ落とされた存在にしてくれます。中途半端はいけないです。どちらでもいいので、自分にいちばん合う、ゾーンの入り口を作って下さい。
いちばんいいのは、整理整頓ですね。
次にゾーンに入るためのルーティンを組み立ててみましょう
繰り返すだけで心が落ち着くようなルーティンを組み立てましょう。毎回同じようにできることが必要です。この手順は、最初のうちは多いほうが良いでしょう。たとえば、コーヒーをいつもと同じコップに煎れる。それを机の決まった場所にきっちり置く。持ち手を必ず左に向ける。そこではじめて一口飲む。右手でライトを点ける。必要な筆記具を、いつもと同じ順番に間違えないように置く。その後ペン先を揃えて並べる。
意味のないことを、間違えないように粛々と行っていると、その行為にだけ集中できるようになります。ここが大きなポイントです。そのまま勉強に向えば大丈夫です。「きょうは仕事で嫌な思いをしたなぁ」「先生の言葉、まじムカつく」といった勉強に全く関係のない感情、さまざまな雑念を、ルーティンはあっさり削ぎ落としてくれます。
そのままやるべき課題に向いましょう。
ゾーンに入るためどのような勉強からやっていくかを考えてみましょう
ルーティンが終わったばかりだと、まだ「ゾーン」には入りきれていません。その入り口にいるだけです。まだ集中は浅いので、難しい課題は避けましょう。ここでは「やるべき中でいちばん簡単な勉強」を行います。コツは、少し厳しい時間設定をすることです。短い時間で簡単な課題を終えましょう。
脳は、少し困難な課題を与えられても、集中しさえすればあっさりクリアしてしまいます。頑張ればやれる程度の少し困難な課題を与えられることと、その達成を、脳はとても好きなんですね。また脳はスピード感も大好きです。ちょっとしたチャレンジを、スピード感をもって脳に楽しませてあげるんです。そして、このことで「時間の壁」もすこし揺らぎはじめます。
「作業興奮」といって、作業をはじめるとそれが楽しくてしかたがなくなり、やる気がどんどん出てくるというのも、脳の特性です。修行僧が、何回も何回も「南無阿弥陀仏」と唱えているうちに気持ちが高揚するようなものです。
ここでは、一日にやる課題の「順番」は、集中が途切れないように、あらかじめ決めて準備しておくのが良いでしょう。勉強する「量」は決めなくても大丈夫です。「ゾーン」に入ったら時間感覚が歪み、止まった時間の中で何時間でも集中していられます。
ここまで来たら、あとは、使える時間のすべてを使って、勉強に集中していきます。ここではいちいち「ゾーン」に入っているかどうか問うことさえ不要です。先ほど少し困難な作業を短時間でやっつけたことで「入った」かも知れません。入った入らないは、もう問題ではありません。あとはゾーンが冷めるまで続けるだけです。
まとめ
心と机を整理整頓し、課題は事前に準備しておく→
まずは細かいルーティンに入っていく→
やや困難な単純課題を決めた時間でスピード感をもってやる→
そのままあらゆる課題に時間無制限で挑み続ける。
以上が全手順です。
わたしたちは特別な努力ではなく、正しいプロセスによって、「ゾーン」に入ることが可能です。そして、これ以外にも、あなたに合った「ゾーン」への入り方はあるはずです。さあ、「ゾーン」獲得に向けていろいろ工夫してみましょう。